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“音信不通”の弔い
前回の記事の続きです。
社会情勢の変化とともに、
【罪悪感】にかられてしまった彼に
“音信不通”にされてしまった彼女は、
その関係を卒業することを決めました。
そんな彼女の決意とともに、
私たちはセッションの形で
“音信不通”の弔いを進めました。
まずは
“音信不通”という結末によって
彼女が感じた身体的な苦しみを
味わってみることから。
そして、
彼女のなかに存在する
さまざまなパーツさんたち(感情たち)
の気持ちを一人の人格として尊重し、
その気持ちを聴かせてもらいました。
あらゆるパーツさんたちが、
それぞれの想いを話してくれたことで
彼女自身がかなりニュートラルな状態に
なっていきました。
ここまでのプロセスで、
1週間に1回の頻度で約1ヵ月が
経っていました。
二人の関係性をプロセスし直してリソースを構築する
さまざまな感情が混在する状態から、
ニュートラルな状態にとどまることが
できるようになってきたら、
今度は『リソースの構築』です。
リソースとは、
その人にとって
“いい感じ”がするものすべてです。
好きな人やもの、場所。
やりがいやモチベーションになるもの。
落ち着くもの。
アガるもの。
エネルギー源。
心の栄養になるもの。
これらの
“いい感じ”がするものは、
身体が感じやすいのです。
思い浮かべると、
心があったかくなる、
呼吸がゆったりとする…
こうしたポジティブな体感に
浸ることで“リソース”を
構築していきます。
(リソースの構築は、
トラウマケアだけでなく、
自己実現レベルの土台づくりにも
つながっていくのでまた詳しく
記事を書いてみますね^^)
セッションを始める前の段階では、
彼女のなかで彼との関係が“黒歴史”に
なりかけていました。
長い年月をかけて築いた絆も、
“音信不通”という結末によって
黒い墨汁がぶちまけられたような状態でした。
抱えていた感情をきちんと解放し、
ニュートラルな状態にとどまり、
彼との関係をもう一度、
出会いから辿り直していきます。
そうすることで、
黒が9割だったのが黒が1割になっていきます。
彼と出会ったときのこと。
少しずつ距離が縮まっていって、
心を開いていったこと。
この人のことが好きだな~
と最初に感じた瞬間のこと。
一緒に遊びに行ったさまざまな場所。
お揃いで買ったいろんなもの。
彼女が家族の死に直面したとき、
そばで支えてくれていたこと。
どれだけ激しくケンカをしても、
ちゃんと仲直りができたこと。
将来はこうしたいね~と
理想を語り合ったこと。
辛いなぁと思うことがあっても、
彼の存在に心が支えられていたこと。
こんなにも大切だと想える人に
出会えたこと。
最後はこんな結果になってしまったけど、
それすら男くさいなぁと思えること。
次から次へと、
リソースになりうる思い出が
溢れでてきます。
それをきちんと、
体感として感じていきます。
胸のあたりでぽわっと
感じるあたたかさ。
近くにいてくれたときに感じた
安心の感覚。
離れていてもお腹の奥で感じられた
信頼の感覚。
こうして、
“黒”を本来の“白”に塗り替えて
身体感覚に落とし込んでいくと、
それがしっかりとリソースになっていきます。
不思議と
相手に対する未練になることはなく、
落とし込んだポジティブな体感は、
新しいパートナーシップの糧となっていきます。
身体感覚は、
ときに“引き寄せ”にも似た現象を
もたらしてくれます。
“黒”を抱えたまま、
無理やり前に進んでしまうと、
その“黒”にふさわしいご縁がやってきます。
よくない結末を迎えた恋愛については、
「相手が悪かった」と断罪して
無理にでも前に進む方が良い、
という考え方もあります。
実在する“悪い男(女)”の数よりも、
恋愛フィルターを通した“悪い男(女)”の数が多くなるのは、こうした考え方によるものかと思います。
そういう考え方は、
恋愛を“勝ち負け”としてゲーム感覚で楽しみたいときには有効ですが、そうでない場合には逆効果である可能性が高いです。
本来“白”であったものを
“黒”のままにして無理に進んでいくよりも、
きちんと“白”に戻してあげてから、
それをリソースにして次のパートナーシップの糧としていくほうが身体にも優しいですよね^^
これまでのご縁をきちんと“白”に昇華して、
ゆったりと進んでいくことができれば、
その“白”にふさわしいご縁がやってきます。
内側のパートナーシップを整えていく
リソースが十分に膨らんできたら、
今度は内側のパートナーシップの
バランスを整えていきます。
最初のほうは、
彼女のなかの《女の子》の声を
聴いていくプロセスを、
私もともにしていきました。
それに慣れてきた頃には、
セッションの形ではなく、
彼女自身の生活のなかで
できるだけ《女の子》の望みを
《男の子》が叶えてあげる、
ということをして過ごしていきました。
今、自分がやりたいことは?
今、自分がやりたくないことは?
今、食べたいと思うものは?
身体の力みに気づいたら、
抜いてみる。
身体の中心を感じながらの合気道の稽古は
いつもとひと味違います。
“伸ばす”のではなく、
“伸びるのを感じる”ためのストレッチ。
“音信不通”の傷が
少しだけうずくときは
グラウンディングでその感情と
距離をおいてみる。
そうやって、
身体の細胞を労わって、
そのちからを信じてみる。
そうすると、
《女の子》の声ももっと
聴こえやすくなってくる。
《男の子》の行動力も
もっと生かせるようになってくる。
だんだんと、
自分とのパートナーシップ、
自己信頼力も高まっていきます。
「やらなければ!」ではなく、
「やりたい♡」からやる。
だから、
これまでの“頑張り”や“努力”とは
また違うものになってくる。
あら?
なんだか私、こんな感じの生き方が
したいのかも!
と、これまでとは違う発想が生まれてくる。
彼女はそんなプロセスを辿りました。
彼女の場合はもともとが少し
《男性性》寄りだったので、
このようなプロセスでした。
(Q.彼女自身が《男性性》が強めなのに、
彼との関係において【無価値感】が
強く刺激されたのはなぜ?
A.彼の《男性性》が強めなので、
彼女の《女性性》が強めにでることでバランスされていたと考えることができます。)
これがもし、
恋愛に依存傾向のある
《女性性》寄りの人の場合は、
●一人で過ごすことが楽しくなる。
●今まで挑戦したことのなかったことに
トライしたくなる。
●彼氏がいなくても充実した日々を
送れるようになる。
●異性のためではなく、自分のために
メイクを研究するようになる。
など、男の子っぽさがでてくるような
プロセスを辿ることが多いです。
自分のなかの
《男の子》と《女の子》が
仲良くなっていくような感じが、
なんとなく分かりますよね^^
外側のパートナーシップの出現
そんな風に、
彼女が内側のパートナーシップを
整えることを始めて数か月した頃、
外側にもパートナーが現れました♡
内側のパートナーシップを
整えることに集中し始めた彼女は
よりいっそう魅力的に、
同じ女性の私から見てもさらに素敵な女性に
なっていきました^^
なのでそんなことが起こるのも、
時間の問題なのだろうなぁとは
感じていたものですが、
本当にまもなくのことでした。
新しいパートナーとは
出会ってすぐにお付き合いすることになり、
お互いに自立した気持ちのいい関係が築けて
いるとのこと。
そんな報告を受けてしばらくしてから、
新しい彼と一緒に3人で食事に行くことになりました^^
そのときの話の流れで、
彼女が前の彼に音信不通にされてしまい、
私とともに“音信不通”の弔いをしたんだ、
ということを話しました。
彼にこの話をするのは初めてだったようです。
その彼の反応はとても意外なものでした。
「分かるわ~。前の彼氏さんの気持ち!」
なんとその新しい彼も、過去に“音信不通”を
やらかした人だったのです(笑)
彼女はそれを聞いて、
「え~?それ私にせんといてよ~?」
と冗談交じりに抵抗していました。
そりゃそうですよね(笑)
でもその心配はなさそうでした。
彼はきちんと“自分と向き合う”という
プロセスを過ごしていました。
仕事がうまく回らなくなって、
自分に自信がもてなくなったことがきっかけで彼女に一切連絡を返さなくなってしまったのだそうです。
それは
彼女のことが嫌いだったからではなく、
むしろ好きな気持ちがあったから。
尊敬されなくなって離れていってしまったら
どうしよう…という不安から“音信不通”が
はじまったとのことでした。。
離れていってしまったらどうしよう…
という不安から“音信不通”にしてしまう。
この矛盾した行動が、
無意識のなかの【罪悪感】のなせるわざ
なのかもしれないですね。
当時の彼は、彼女のことを
ちゃんと支えられる自分でなければ、
今までのように連絡をする資格すらない、
と本気で思っていたのだそうです。
(この男気が《男性性》の強さを
感じさせますね。
何事も表裏一体であるように、
そんな男気は長所でもありますよね^^)
きちんと仕事が回って、
自分に自信が持てるようになったら、
もう一度彼女に連絡をしようと考えていたそうです。
(でも、
彼女からすれば、
そんな気持ちをひと言も聞かされていないわけですから、【無価値感】に打ちひしがれるままに傷ついてしまったであろうことはたやすく想像できます。。
つくづく、
私たちが【罪悪感】なり【無価値感】なり、
自分自身の“弱さ”を認めることができれば、
相手の“弱さ”を知ることもできるのかも、
と思わされますね。)
音信不通にされた彼女からは、
毎日メッセージが届き、
着信履歴も1日に2回はあったそうです。
それが1か月近く続いたようなので、
彼女も【無価値感】ゆえなのか、
満たされない想いの強い傾向が
あったのかもしれません。
それらすべてに無言を貫いていたそうです。
そして、
新しい仕事が決まり、
彼がまた自信を取り戻した頃、
彼女にダメもとでアプローチしたところ…
もう手遅れだったようです。
「彼女がもう前のままではない、
ということは覚悟していたし、
その結果にショックを受けた…
ということもなかった。
むしろここまでの間にどれだけ苦しませて
しまったんだろうという後悔が大きくて、
彼女のために自分ができることは
“自分が幸せにならないこと”かもしれない、と思った。
自分には誰も幸せにできないのだから、
誰かを好きになる資格もないし…。」
彼のこの話を聞かせてもらっている間、
私たち(女性二人)が感じていたことは…
“ださ…”
の一言でした(笑)
これはまさしく、
当時の彼も彼自身に感じていたようです。
(よかった!笑)
「でもそうやって前の彼女のせいにして
逃げてる自分が、だせーなと思うようになった。
よく考えたら、
彼女は、俺が成功してるから好き!なんて言ったことなかったし、
そうでなきゃいけないと思い込んでたのは自分だけだった。
いろいろ原因があって、恥ずかしいとか情けない気持ちもあった。」
(この、
自分を「ダサいな」っていう
視点でみてみるの、いいですよね^^
私も生き方を変えていくとき、
自分に対する「ダサいな」という視点が
とても役に立ってくれたと思います。
自分を責めたり、否定するのでもなく、
ただありのままを「ダサいな」と
感じてみる…ちょっと笑えてくるし、
よし!ちょっと変えてみるかって
軽やかに思えたりもします^^)
どうして
うまくいっている自分でないと
ダメだったのか?
どうして
誰かに認めてもらえるまで
踏んばっていたのか?
それは人に認められるためだけに
やっていたことではなかったか?
自分がやりたいと思ってした
ことだったのか?
及第点を満たしていないと
楽しい時間を過ごしてはいけない、
と思い込んでいた原因はなんだったのか?
そんなふうに、
彼も“自分と向き合う”ということに
自然と取り組んでいたようです。
《男性性》の強い傾向にある人が、
“恥ずかしい”という感情を認めたり、
向き合ってみるということは、
とても勇気がいることで、
自身の“弱さ”を認めることにもつながっています。
ある意味で本当の“強さ”が求められますよね。
こちらの記事で、
“対極の質”について書きましたが、
まさしく
“弱さ”を知るを深めると“強さ”を知るも深まる、ということなのだと思います。
そうやって、
本当の強さを身につけた彼だから、
今の彼女と出会ってご縁があったのは
自然なことなのかもしれないなぁ、
なんて思いました^^
3人で食事に行ったこの日、
一番印象的だったのは、
彼女がお手洗いに行くと席を立ったときの
ことでした。
私がふと、
「〇〇ちゃんが隣にいたら、
新しい仕事も絶対うまくいきますね!」
と思ったまま伝えてみたところ…
「いや~、、、
・・・正直そう思ってます」
と、ちょっと照れながらの一言です。
あ~世界は今日も平和です(笑)
音信不通にしてしまったお相手へ
できることなら伝えたいです。
彼女が音信不通をトラウマにせず、
そのプロセスを完了させて、
内側のパートナーシップを
整える日々を送ったこと。
そして、
新しいご縁にめぐまれたこと。
なにより、
新たなパートナーの成功を
彼女の在りようがもたらそうとしていること。
彼女はもう責めても
怒ってもいないということ。
むしろ出会えたことに感謝しているよ、
と私がかわりに伝えたいくらいです。
なにより一番お伝えしたいことは、
音信不通にしてしまったという罪悪感から、
もう誰のことも好きにならないと決めたり、
自分は悪い人間だと責めてたりしないで
欲しいということです。
誰かのことを好きになって、
相手のことを傷つけそうになったとき、
「どうせ自分なんて…」
とふてくされずに、そんな自分を
“だせーな”って愛でてあげて欲しいです^^
その【罪悪感】は
根源的なものであり、
私たち人間がいろんな経験をするために
もって生まれたものです。
その【罪悪感】が
さらに強まっている、
ということは育ってきた環境や
自身の信念から“男らしさ”を
大切にしてるからとも考えられます。
それはとても魅力的なことで、
リソースにすらなりうるものです。
一人の女性のみならず、
多くの人を幸せにできる器をすでに
もっているということです。
だからこそ、
そのキャパシティーを広げるためにも、
その【罪悪感】の存在を認め、
ご自身のなかの《女の子》の感情も
大切にしてみてください。
“弱さ”を知ることは、
“強さ”を知ることを深めます。
《女性性》が強い人にとっても
それは同じことで、
【無価値感】の存在を認め、
その“弱さ”に寄り添ってみることが、
自分と相手を大切にすることにつながります。
音信不通にしてしまう側も、
音信不通にされてしまう側も、
それぞれの頭の片隅に、
そんな発想が少しでもあれば、
その行為をただただ悔やんだり、
断罪するだけに終わらずにすむのかもしれません。
激情型⇒穏健型のパートナーシップへ
今の時代は、
80-90年代に流行った
トレンディドラマのように
“愛さえあれば…”
といってお互いがドラマティックに
見つめ合うだけで生き抜ける時代ではありません。
それは、
この時代が過酷だ、
という意味ではなく、
確実に進歩している、ということです。
社会的な不安定さだけではなく、
一人ひとりの意志や考え方がどうなのか?
が問われ続けている今、
より本質的なところが求められています。
トレンディドラマの恋愛のままでは、
いつまでたっても、
“相手ありき”ですよね。
自分にぽっかりと与えられた穴を、
いつまでも他人に埋めさせ続けることになります。
自分と相手の気持ちが《3:7》
であることを維持するために
駆け引きをしようとしたり、
コントロール欲求を相手にぶつけて、
自分の思い通りに動いてくれることに
愛を感じるような激情型のパートナーシップは時代錯誤かもしれません。
社会情勢が不安定に傾いたとき、
お互いが【罪悪感】と【無価値感】に
振り回されずに一緒に乗り越えていくことが
求められますよね。
そのしなやかさの土台は
「自分を知っていくこと」で培われます。
「自分とのつながり」ができていると…
そのさきにある
「大切な人とのつながり」は、
トレンディドラマでは味わえない
深い幸福感をもたらしてくれます。
お互いのマイナスを埋めるためでなく、
“好きだから一緒にいる”
という理由の純度が高まっていくから
なんですね^^
すべてのすれ違いの原因が、
【罪悪感】と【無価値感】
にあるわけではありません。
それでも、
それらのエッセンスの存在を知り、
“自分のなかになにかあるのかも”
と意識を向けるきっかけとなれば
原因はなんだっていいんです^^
自分を深く知る、
ということができてくると、
濁りなく相手のことを感じることが
できるようになっていきます。
夫だから、妻だから、
彼氏だから、彼女だから…
そうしたこと抜きに
お互いを大切にできるって
なんだか気持ちがよくて素敵なことだなぁと純粋に思います^^
静かで穏やかな、
それでいて力強い、
そんな穏健なパートナーシップ。
この時代の流れが
私たちに求めているものは、
一段階上のレベルのものなのかも、
と感じる今日この頃です。
——–
Q.「ソマティック(身体性)とは?」
●【概念編】
⇒思考(左脳)と身体感覚(右脳)のちがい①~⑤・<最終章>
※<最終章>までの連続シリーズです。
●【本質編】
⇒ソマティック(身体性)な探究~本質編~
●このブログでは、
【パーツ心理学】にもとづいて、
身体の細胞や感情に対して
“擬人的”な表現を多く用いています。
自分と向き合ったり、
感情と距離をおくことを優しく
手伝ってくれる神経生物学的な考え方です^^